エバンゲリオンのカルトなファンのことではない。ただし、語源としては同じかも知れない。エバンジェリストは、もともと意味はキリスト教の「伝道師」のことであるし、エバンゲリオンも「使徒」が来襲するので、いいたいことは同じなのであろう。
さて、IT業界ではエバンジェリストは最近はやりの職種である。
他のページにあるような、「プログラマー」とか「アナリスト」とかいう職種とは異なり、開発には参加しない。位置付けとしては営業職のトップになる(異論のあるエバンジェリストも多いかもしれないが)。
主な仕事は、新製品コンセプト発表セミナーなどで語りまくる、業界団体主催のカンファレンス(会議)などで講演を行う、メディアに露出して新しい用語や概念、世界観を広める、などである。
エバンジェリストは2種類いる。
- みずから自然にある新しいパラダイム(テクノロジーや考え方、手法など)にのめり
こみ、あっちこっちで熱心にしゃべりまくったり活動したりしているうちに、周囲がエバ ンジェリストとして認知するタイプ(クロスオーバー型)
- 企業が自社の商品やサービスの普及のために「おまえエバンジェリストやれ!」と任命してなるタイプ(企業型)
両者は、熱意の度合いがまったく異なるが、共通点は、とことんそのパラダイムに詳しいことである。かつての言葉でおきかえれば「第一人者」ということになろう。
ただし特に「新しいパラダイムを広める」ということに特化した人物をエバンジェリストと考えればよい。
職種としてのエバンジェリストはまだ数が少ないが、存在としてのエバンジェリストを考えると、身近にかならずといっていいほど存在する。
たとえば「○○のことならあいつに聞け」といわれるような人は、本人の意識の如何にかかわらず、エバンジェリストの卵といっていいだろう。あなたは周囲のだれかに影響を受け、ある趣味の世界に入り込んだことはないだろうか。そしていつのまにか仲間が増えていたことは?
周囲をあることに注目させ、興味を持たせ、知識を伝達するのみならず集団的にある変革に向かわせることができる人はすべてエバンジェリストである。こういう人は社会的価値が高い。
ある企業が構造改革(リストラクチャリング)のためにまったく新しい人事制度を導入することを考えたとしよう。おそらく、当初は多くの反発にあうはずだ。今の立場がガラガラと音をたてて崩れていくのだから当然である。これらの反発をおさえ、前向きに対処するようにもっていくのは並大抵のことではない。
しかし、そのときの反発のなかには、不必要な反発も含まれている。多くは先の見えない不安から来ているからだ。そんなとき、エバンジェリストが社内に存在すると、様相はまったく変わってくる。新しい制度の詳細を社員たちにわかりやすく提示でき、改革後の未来像をクリアに示せるエバンジェリストが一人でも存在すれば、人々の反感はみるみるうちに影をひそめ、真に不利益をこうむる人だけが反対者として残るであろう。会社側は個別にそれらの人々と面談し、代案を提示すればよい。
エバンジェリストは、ビジョンを伝達できる人のことである。そして、エバンジェリストの力は、多数の人間の意識を画期的に変化させることができるのである。このように高い影響力をもつエバンジェリストの資質とは何であろうか。
- 直感と想像力
- 確信犯的熱意
本来これらは政治家に求められる資質であった。今は形をかえ、人々のなかにきらめく光を放って存在する。