森元総理大臣が現職の首相だったころ、「IT革命」を「イット革命」と読んだのはまだ記憶に新しい。
この人は他にもいろいろな名言(迷言)の多い人なので、渡された原稿をそのまま読んだため、まちがえたのか、それとも確信犯的にカッコよく言ってみたのかは不明である。
いずれにしても人々の記憶に「IT」の2文字が残った。このころを境に、IT(アイティー)が広く認知される言葉として浸透していったのも偶然ではない。
「IT系」。数年前世間を騒がせたライブドア事件では、このことばがひんぱんに発せられたし、「IT企業」だの「IT導入」だのいろいろと使うようになった。
ではいったいITとは何か。
人に聞くのも今さらな言葉になってしまったので、ここで整理しておこう。
電子的な情報、つまり、コンピュータやインターネットの上を流れている信号を基礎とした人間の活動全般を支える技術の総称。
情報科学(Information Science)と呼ばれる分野は信号処理などの主に基礎理論を扱い、ITはそれを含む応用技術全てを指す。
必然的に、現代の人間の活動全体にその影響が及び、携帯電話から人工衛星までIT技術無しに達成できるものはほとんどないといってよい。
その技術の発端は、1946年に開発された始めてのコンピュータ、1972年に発表されたインターネットの基礎技術ともなったTCP/IPなどに見ることができる。
IT技術の多くが、実は、軍事目的の開発によることは偶然ではない。
速く、安全に、大量に情報を伝達し、処理する技術は、国の存在を賭けた戦争という行動において最も厳しく成果を問われるからである。
人間の志向や記憶の仕組みの解明が進められているが、コンピュータと脳の類似点や脳内の情報処理などが明らかになるにつれて、
IT技術はより一層重要性を増している。
人類の知識を統合して利用するためには、もはやITの活用以外に進歩の道はない、といえる。
現在、各国で進みつつあるe-Lerningは、この知識共有を教育面で実現しようとするものである。
ノーバート・ウィナーは、「サイバネティクス」という分野の創始者であるが、その著書に「人間機械論」という、現代のテクノロジーの概念の基礎を明示したものがある。
現代人の大きな課題は、人間自身とそれを助ける機械であることは間違いない。
つまり、最近の技術のトピックスである、ロボット、マイクロマシン、e-Learningは全て基礎技術としてITが必要となるのは必然の成り行きなのである。