システム・インテグレータとは、システム構築を業務とする企業の総称であり、ちょうど、建築分野でゼネコンと呼ばれる受注業務のトップに位置する企業に相当する。
顧客は、システム構築を発注する場合、通常一社(場合によってはコンサルタント企業と2社)だけに発注する。これを受けたSI企業は、作業を分割して複数の企業に分配する。進捗の管理やお金の管理、納品まで責任をもって行うのがSI企業である。
SI企業は、SIerと書いてエスアイアーとも呼ばれるが、言いにくいためか業界の中では「ザイアー」と言う人もいる(こちらの方がカッコイイ)。
経済産業省がSI認定を行っていることもあり、SI企業とは名のとおった規模の大きい会社がほとんどで、信用もある会社と思われている。
こう聞くと、SI企業に就職すれば給料もよく仕事も面白いと思いがちであるが、実はそうとは限らない。なぜなのかを説明しよう。
前述のように、SI企業は巨大ゼネコンと同じく、受注プロジェクトの統括と仕事の振り分け、調達や進捗管理が仕事の中心で、実際の開発業務は下請け中堅開発会社やソフトウェアハウス等が受け持つことになる。
SI企業はハードウェアの選定、発注も行い(ここでたっぷりとマージンがとれる)、下請け企業の選定、監督も行ってマージンを稼ぐわけだが、むろん開発の仕事を何もしないわけではない。
上流工程である分析〜基本設計までは自社で行うことが多く、これに失敗すると100%プロジェクトはコケるので責任重大である。そのため、大規模開発のノウハウを持った優秀な人材を常にキープしている。
しかし通常下流工程(詳細設計〜コーディング・テスト)は行わない。
その結果、自社生え抜きの優秀な技術者が育ちにくい。現場を経験するチャンスがないからだ。おおむねSI企業で活躍しているのは、中小の開発企業で第一線で活躍してきた現場育ちのSEが、
ヘッドハンティングされたり、自ら転職したりして集まってきた連中である。
ものづくりの基本は現場にある。ではSI企業でない中小企業は面白いのか?答えは「千差万別」といえる。では、どうやって面白い企業を見分けるのか。
SI企業でなくても直接顧客から受注し自社で全工程を請け負っている企業はたくさんある。どこが違うのだろうか?
コア・コンピタンスという言葉がある。企業の核となる技術のことを指す言葉だが、これが確立している企業は受注に強い。例をあげると、セキュリティ、AI、ビッグデータ解析、構造計算などである。
中規模以下の開発プロジェクトは「システム統合(=マネジメント)」にかかる負担がすくないため、直接これらの専門的技術を持つ企業に発注されることが多い。
彼らはSI企業からの2次請負に頼る必要がないのだ。
これらの企業の仕事で面白い点は、技術レベルが高いだけでなく、全工程を網羅することにより、大規模開発では得られない経験ができることである。「大きいことは、いいことだ」とはいえないのである。
SI企業へ就職する道は、あとからでも開かれている。十分にものづくりのフルコースを経験してからでもおそくはない。